汲めども尽きぬ知恵の泉

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【書評8】『脳には妙なクセがある』池谷裕二|人がブランドに動かされる理由とは

直観的にイメージで判断する脳

前回の『不合理な地球人』では、人の間違った判断について経済的な視点から触れたが、今回は脳科学からだ。

 

有機栽培、オーガニック食品という言葉を頻繁に目にする。こういったフレーズを見るとついひかれてしまう。健康に良さそうだ。ところが様々な方面から

 

「昔ながらの伝統的な栽培法がベターな保証はない」

「農薬を使わない自然派野菜が優れていると感じるのは妄想に過ぎない。しかるべきところでしかるべき農薬を使わないと、かえって健康に悪い農作物もできうる。」

「オーガニック食品が健康によいという科学的根拠はいまだに欠如している。」

 

などという声もあるのだ。マーケティング的要素がふんだんにあるのもひとつ事実だ。農薬だけではない。遺伝子組換食品、人口保存料、水道水など、科学的な面や深い知識もなく、先入観だけで悪い印象をわたしたちは持ちがちである。

 

見えないものにダマされる脳

先入観にかかわる「ブランド」に対して面白い実験がある。ワインを味わう時の脳の反応をMRIで調べたというものだ。まず、ワインを飲むと「内側眼窩前頭皮質」という脳の部位が活動するが、これは知的快楽を生み出す部位だ。つまり、おいしいワインを飲むことは快感なのだ。

 

被験者に、「5種類のワインを飲み比べてほしい」とつたえ、それぞれのワインの値段も告げる。実際には三種類しかなく、値段もデタラメであるが、感想を聞くと値段の高いものがおいしいという。しかもMRIで脳を見てみると、教えられた値段が高ければ高いほど、内側眼窩前頭皮質の活動が活発になっていたのだ。

 

食事の「おいしさ」が科学分化だけで決まるものではなく、「高級なものを食べているという」実感、先入観も大きくかかわっているというわけだ。ブランド、オーラ、ムード、そういった見えざるモノに(科学的にも)動かされるようにヒトの脳はデザインされているのだ。

 

 

ほかにも「知ったかぶり」や「運まかせ」といった人がやりがちな行為を、脳科学を根拠に26トピック紹介されている。それにしても人のことを知っていくのはおもしろい。

 

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