汲めども尽きぬ知恵の泉

「武器はこの身ひとつ」を目指して

星新一のショートショートの世界⑤|「あばれロボットの謎」

 

 

人間の乗り込んだロケットが宇宙に飛び出すように、宇宙からとんでもないものが

地球にやってこないとはいいきれない。

 

ある晩秋の夜、郊外に住むエフ少年は星がまばたく空を見て考えた。

「この広い宇宙の星々には、どんな人たちが住んでいるのだろう」

 

そんなとき、星空をちかっと光ったものが横切った。

ちょうど見ていたエフ少年は声を上げるが、

「きっと流れ星だろう、早く寝なさい」とお父さん。

丘の上の向こうに飛んでいったあの光を気にしながら、ねむりについた。

 

次の日の朝、外の騒がしい声で目を覚ます。二階から見ると、

丘の上に、銀色にかがやく大きな円盤が着陸しているのだ。

近くには警官も来ていて、人々が近づかないように注意している。

 

ふいに円盤のドアがゆっくりと開いた。

「どんなやつが出てくるんだろう」

と少年が見つめていると、人間の二倍以上もある大きなロボットが、

三つあらわれた。その中の一つは、丘の上の木を軽々と引き抜いている。

すごい力だ。

 

人々が見つめる中、ロボットたちは木だけでなく、

電柱も片手で押したおして丘を下りていく。

 

町に来るのを防ぐため、警官たちはいっせいに引き金を引いた。

だがびくともせずにさらに進み、家も壊しはじめた。

 

「すごいね、こっちにくるのかな」と無邪気なエフ少年に、

「足は遅いようだから、あわてることはなさそうだ」と心配顔のおとうさん。

ロボットの力はものすごく、コンクリートの家はかんたんに壊れ、

どんな銃も、火炎放射器も効かないようだった。

 

武器が駄目なことを知った警官たちは、落とし穴を掘った。

計略通り落ちたものの、ほかのロボットの助けを借りて簡単に出てきてしまうし、

その穴も埋められてしまう。

 

「とても駄目だね、おとうさん。だけどあのロボットたちは何しに地球に来たのだろう」

「わからん。もしかしたら、どこかの星が地球を侵略しようとしてるかもしれん。

だとしたら大変だ」

エフのお父さんだけでなく、人々もそう考えたため、あわてはじめた。

警官たちもいろいろ試しているが、効果は無いようだ。

 

そのうちに、もう一つ円盤があらわれ、高い空で飛行をやめると

パラシュートを落とした。人々は、

「爆弾が吊り下げられているかもしれない、あんなロボットを作るくらいだから、

爆発もものすごいぞ。」と逃げ回った。

 

パラシュートを落とした円盤は、今度は急降下をはじめ、

目もくらむような光線が発射され、煙が立ち上った。

「もう終わりだ、あれには手の施しようがない」

 

だが、円盤は何回か急降下した後、いつの間にか帰っていった。

しかも丘の上の円盤も、あのあばれロボットもいないのだ。

人々は安心しかけたが、パラシュートだけは地上に降りるところで、

あわてて身をふせ、息をころした。

 

地上についたパラシュートは、爆発を起こさなければ煙もなく、

選ばれた警官がおそるおそる近づいて行った。

 

あったのは大きな缶で、周りに記号のようなものが書いてある。

学者たちによって解読されたことで、あばれロボットの謎が解けた。

 

「私たちの星の地ならしロボットが、円盤に乗せて帰る途中、行方不明になったのです。

地球に行ったことが分かったので、後から追いかけていきました。これはお詫びです。」

缶の中にはすばらしい宝石が詰まっていた。

 

「僕もあんな星に行ってみたい」とエフ少年。

 

 

感想

 

宇宙は広い。どこか遠くの銀河にある、違う文明の星どうしで似たような出来事が起こっててもおかしくない、と考えてしまった。

非日常の出来事を現実的なように、滑稽で人間味にあふれる形で書かれるこの世界観が好きだと思う。