【書評20】『教団X』中村則文|総合的な知識がついて良き
絶対的な闇、圧倒的な光。
「運命」に翻弄される4人の男女、物語は、いま極限まで加速する。
米紙WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)年間ベスト10小説、アメリカ・デイヴィッド・グーディス賞を日本人で初受賞、いま世界で注目を集める作家の、待望の最新作!
-booklog 本の紹介
この「教団X」は、とにかく情報量が多いです。
しかもサッと思い出しただけで、脳、宇宙、仏教、量子力学、戦争、貧困国などがあり、幅の広さもあります。
ストーリーとしては、楢崎という男性がある宗教団体の女性と出会ったことをきっかけに、さまざまな組織や出来事に巻き込まれていく感じです。
その中で教祖の話として、教団の幹部の訴え、人々の実体験として、先ほど羅列したようなありとあらゆる情報がでてきます。
私がこの作品から感じた、あるいは学んだ内容を大きくまとめると、2つになります。
①世の中の仕組み、事実を分かっているようで知らなさすぎる。自分が住んでいる世界を理解することは少なくとも大切である。
例えば、作中で「なぜこの世の中から貧困が無くならないのか?」という問いが出てくる。
実際世界は貧困者などいなくなるくらいの食料を生産できるし、貧困国も自国をまかなえるくらいの農業ができるはずらしい。
そして、それをさせていない原因の一つが富裕国の政治であり、企業であるらしい。
募金のお金が正しく届かないこともあるという話もあった。
また、テロの話も出て来る。
「テロが起これば儲かる会社もある」
と聞けば、さまざまな想像ができてしまう。
・そのテロが起こったのは本当に宗教的理由だけか?
・どこかの国、企業が裏で暗躍していないか?
・テロ組織のリーダー格の人物は金で動いて、あるいは操られていないか?
妄想を脱するには自分に知識が足りなすぎるが、今までとは違う考え方ができた。
②善も悪も人が作り出した概念で、絶対的なものではない。人にはそれぞれ正義がある。固定概念は良くない。
前回あげた作品「掏摸」と同じように、この世界において良い、悪いとはなんだろうかと考えさせられました。
一例で、「宗教」と聞くと、日本人はマイナスなイメージを持ちがち。
さらに、ニュースやテレビ番組もそのような思想になるようにしている感すらあるように思える時もある。
実際オウムのように人殺しをしてしまう集団もあるし、政治的、あるいは利益のために存在している集団もあるかもしれない。
ただ、「神」という寄るべき存在は、弱い人間にとって助けでもある。そして人間は弱い。
例えば受験に失敗したとき、解決しそうもない課題がある時、信仰者であれば
「これは神が与えたものだ」
と信じることで、気持ちを軽くすることができる。くよくよ悩むことがなくなるかもしれない。励まされ、やる気が湧くかもしれない。
また、極端な話をすると、死ぬことへの恐怖も薄くすることができる。
困難や悩み事、後悔を打ち消す手段として、ストレスが軽減できら手段として、「宗教」というものは優れている。
なにか言いたいことからズレてしまったかもしれない。
また中村さんもこんなことを伝えたいわけじゃないと思う。
とにかく言いたかったことは、だいたいこんな感じです。
良い悪いを簡単に決めつけてしまうと
- 可能性を狭めてしまう
- 物事の新しい視点を発見できない
- 物事の裏や真意を逃してしまう
そもそも「良い悪い」というのはあなたが主観的に感じたものであるし、あるいは世間が勝手に押しつけている、思想を植え付けられたものである。
まとめ
「教団X」は
多方面の知識がつく
その人なりの人生観や哲学がより良くなる
知るべきことを教えてくれる
このような点で非常に良い本です。
厚いけどスラスラ読めるので身構える必要もあまりないです。
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