【書評5】『星の王子さま』サン・テグジュペリ|いちばんたいせつなことは、目に見えない
外見は大切ではないが利用できる
あるトルコの天文学者が、発見した小惑星について会議で発表した。しかし、彼の発表はそのときの服装のせいで認められることはなかった。数年後、今度は洗練されたスーツで全く同じ発表をしたところ、全員に認められた。という話が出てくる。
内容が考慮されず、見た目だけで判断されてしまったわけであるが、世の中はこういったことにあふれている。ちょっとズレているかもしれないが、裁判で美男美女の方が罪が軽くなりがちというのが一つ挙げられる。罪の内容で裁くべきなのに、本質とは関係のない部分で判定されてしまっているという点において上の件と似ている。
実際私たちは無意識にこういった誤った判断をしたり、偏見を持ちがちだ。子供の言うことを軽視したり、テストの点数で生徒のまじめさを評価したり。
逆に言えば、人間の「信用」や好意というものは、ちょっとしたことで獲得できるということかもしれない。
何かと関係を持つということ
王子様と友達になった主人公。別れ際に、王子さまはプレゼントをくれたという。それは、
「君が星空を見上げると、そのどれか一つに僕が住んでいるから、そのどれか一つで僕は笑っているから、君には星という星が、全部笑ってっるみたいになるっていうこと。君には、笑う星々をあげるんだ!」
ということだった。王子様のことが好きで、その笑い声も大好きな主人公は、悲しい時は窓を開けて空を見上げることで、素晴らしい音がする鈴のようなものに心をいやしてもらうことができるのだ。
また、麦畑やササキは、王子様の金色の髪を思い起こさせる。これも、主人公にとってそれらが、見るたびにやさしい穏やかな気持ちになれるという、王子様からのプレゼンtなのだ。
学校の帰り道というのは、誰から見てもただの一道路にしか見えない。しかし、友達との思い出や、恋人との記憶があると、それはその人にとってただ一つの、何かしらの意味を帯びた場所へと変化する。
見た目(モノ自体)は何も変わっていなくても、誰が見ても同じでも、誰かにとってははっきりとした意味を持った存在になりうるのである。そして、そういったものは目では認識できないものなのだ。
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