汲めども尽きぬ知恵の泉

「武器はこの身ひとつ」を目指して

星新一のショートショートの世界⑥「新発明のマクラ」

 

概要

 

エフ博士は眠っていても勉強ができるマクラを発明した。

「やれやれ、何とか大発明が完成した」

と博士が声を上げると、聞きつけたおとなりの家の主人がやってくる。

 

 

電子部品がきっちり詰まったそのマクラは、知識を蓄えており、

電磁波の作用によって、眠っている間に頭に送りこまれるという仕組み。

といってもまだ試作品のため、英語だけであるが、

ただ眠っているだけで英語が話せるようになる。

また、改良を加えれば、ほかの勉強にも使えるようになる。

 

 

まだ効き目をためしたことがないことを知ったおとなりの主人は、

(この発明に感心し、かつ英語がうまくなりたいと思っていたので)

恥ずかしがりながらも「使わしてください」と希望した。

エフ博士は承諾。「一か月ほどでかなり上達する。」

といいわたすと、主人は嬉しそうに持って帰っていった。

 

 

しかし、二か月ほどたつと、おとなりの主人が

「ずっと使ったが一向に話せるようにならない」

とつまらなそうに枕を返しに来た。

中身を調べても故障は見つからないので、博士は

「どこかが間違っていたのだろうか」と考えたが、

効き目がなければ意味がない。大発明だと思っていたものは駄目だったようだ。

 

 

しばらくたち、エフ博士は道でおとなりの主人の娘に会ったため、

「お父さんは元気かね」と声をかける。

「ええ、でもちょっと変なことがある」と娘。

なんと、おとなりの主人はねごとを英語で言うようになったのだ。

眠っている勉強が役に立つのは、眠っているときだけであった。

 

 

 

以下感想

 

 

おとなりの主人はせっかく覚えた英語が夢の中でしか使えなくてむなしい。

返却したところを見ると、夢の中ではペラペラなことですら気づけてないようだ。

無意識の世界だから時間はかかりそうだけど、

続けてたらいつか話せるようになるかもしれないのに。

 

 

このマクラに応用を利かせて、眠ってる時も本を読めたり

知識を得ることができるようになったら、疲れが取れなそうとかはおいといて、すごい便利だ。

もしこんなマクラができたら、どれだけ怠惰な人でもスーパーマンになれる。

 

 

星さん自身が「あー、眠ってるあいだに原稿完成しないかなあ」

とかぼんやりと思っていたところからこの話のアイデアが出たのかもしれない。

 

 

もし現実に研究が日本で完成したら、

「日本人は眠っていても勤勉」とか海外からいじられそう。