汲めども尽きぬ知恵の泉

「武器はこの身ひとつ」を目指して

【書評2】『緋色の研究』コナン・ドイル|シャーロックホームズの第一作

推理分析は多くのことをもたらしてくれる

ホームズは、自身についてでもある以下のような記事を新聞に載せている。

 

観察力に富む人間は、多くのことを学ぶことができる。ある一つの提示されたモノから、見たり聞いたりしたことがないものの存在を推定、想像できる。また、顔面筋肉のちょっとした動きや、視線の移動というような瞬間的表情によって、人心の奥底まで見抜きうる。

 

そういった推理分析学は、簡単に身につくものではない。そこで初心者は、まず他人に会った時に一見して経歴職業を判別できるように修練を積むべき。

 

ばかばかしく思えるかもしれないが、これこそが観察力を鋭敏にし、またどこに目をそそぎ、何物を探り見るべきかを教えてくれる。指の爪、靴、指のタコ、表情、カフスなど、いずれもそれぞれの人物を教えてくれる一例である。

 

実際ホームズは物語の中で、初めて会った人物に対して「中国に行っていた」「海軍兵曹だった」と言い当てる。また、足跡から身長や年齢、その人物の行動を推測したり、落ちている灰から煙草の銘柄を突き止めている。

 

推理分析学とは具体的にどのようなものか?

 

あるできごとを、最初から順序を追って話してゆくと、多くの人はその結果がどうなったかを言い当てる。個々のできごとを総合してそこからある結果を推測しているのだ。数ある事実が与えられた状態から一つの事実を導き出す方法だ。

 

一般に、ほとんどの人が推理といわれて思い浮かべ、また行っているのはこういった未来への総合的推理だ。

 

それに対し、ある一つの結果だけを与えられて、はたしてどんな段階を経てそういう結果に立ち至ったかということを論理的に推理するのが、ホームズがやる逆推理、分析的推理だ。

 

上記のような推理の例や、数々の難事件の解決は、この方法が可能にしている。「過去にさかのぼって逆に推理する」「ある事象から別のものを見出す」というすばらしい考え方はしかし、大抵の人は知ることがない。

 

「グラス」という物体は、その中に入れるであろう液体の存在を推測させる。「お菓子」という製品ひとつにしても、その工場や働く人を存在せしめ、想いを馳せることができる。

 

一見平凡なようなものにこそ大きな発見があるということを再認識させてくれる。

 

知識は武器となる

日の下に新しきものなし。すべて事象は必ず前にあったことの繰り返しにすぎない。とホームズは言う。彼は、20世紀に起きた恐るべき犯罪はすべて記憶しているという。それというのも、手口、事件現場などで過去に同じようなものが思い当たれば、犯人の像や動機、背景などを推測しやすいなど多くのメリットがあるからだ。

 

この考え方は、ほかのことにも適応できると思う。例えばプロ棋士は膨大な棋譜を研究、記憶しているが、これは実際の対局で似たような場面に出会ったときに生かすことができる。

 

東大王という番組でおなじみのクイズ王である伊沢拓司さんも、youtubeの動画内で「結局は知識なんだよ、分からないこともすべて自分の持っている知識で応用が利く」

的な発言をしていた気がする。

 

株やFXなど投資であっても、チャートの移り変わりを良く勉強しているものは、同じようなチャートに直面した時に参考にできる。このホームズの理論は多くの人が役に立てると思う。

 

さまざまな作品に見え隠れするコナンドイル

どんな分野であれ、後世に多大な影響を与えた作品というのは、現代のほかの作品にもそれが見え隠れする。このシャーロックホームズシリーズもそうだ。勝手な考えだが、デスノートのLや、柳広司の作品のスパイなど、わたしにはシャーロックホームズ作品の血が受け継がれているとしか思えない。

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