【書評1】『億男』川村元気|人生に必要なもの。それは勇気と想像力と、ほんの少しのお金。
お金持ちになりたいと心から願っているのか?
「学問のすゝめ」の有名な一説、『天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず。』「億男」の主人公とおなじく、多くの人はこの文の意味を「人間は平等」的な意味だと思っているが、実は違う。この文には続きがあるのだ。
『されども今、広くこの人間世界を見渡すに、かしこき人あり、おろかなる人あり、貧しきもあり、富めるもあり、貴人もあり、下人もありて、その有様雲と泥との相違あるに似たるはなんんぞや。その次第はなはだ明らかなり。「実語教」に、「人学ばざれば智なし、智なきものは愚人なり」とあり。されば賢人と愚人との別は学ぶと学ばざるとによりてできるものなり』
つまり、人の上下貴賤というものは、天が創り上げるものではなく、学問の有無によってできあがる、というニュアンスだ。ルール(天、世界、仕組み)自体は誰にとっても平等であり、ルールを理解するものが富み、知らない人間が貧しくなっていく。
多くの人間が金持ちになりたいと願う。その中の何%が「お金」について本気で調べようとし、学んでいくだろうか。小説の主人公は宝くじで三億円を当てる。そしてインターネットでの(それもほんの僅かな)情報だけで理解した気になり、おびえ、振り回されていく。
「あたりまえ」を見つけること、実行すること
この世界では当たり前でないことの方が目立つし、良く思われがち、と登場人物が言う。勝つためには当たり前を見つける目が必要で、そして見つけたらあたりまえにやる。それだけでほとんどの勝負は勝つことができる。しかしこれができる人がこの世の中にどれだけいるだろうか?
これは自分で体験したことだが、オセロや将棋は少し勉強すれば一般の人間にはまず負けないレベルまで簡単にいくことができる。学校での成績も、賭け事も、情報があれば高い勝率で勝てる。ただ、人間は感情や欲にとらわれがちである。理解していても行動できないし、行動しなければ理解してないことと同じだ。
自分の中のお金に関する哲学をより良くしてくれる一冊
「人間は信用にしかお金を払わない」
「うまくお金を使うことは、それを稼ぐのと同じくらい難しい」
「金持ちが、お金をどのように使うか分かるまで、その人間をほめてはいけない」
この本には上のように、ほかにもさまざまな人物の名言、格言が登場する。ドナルドトランプ、ソクラテス、ビルゲイツだったりだが、そういった人の考え方に触れることができる点も良い。
|